研究内容

結合交換型架橋を含むソフトマテリアル設計

 ゴムやフェノール樹脂など、一般的な架橋樹脂は、その架橋結合の不可逆性から、再利用・再成形加工はできません。それに対し、近年、従来の共有結合の概念を覆す”動的な共有結合”という新たな結合種の開発が進んでいます。動的共有結合の中でも、古典的な結合の解離・再会合を伴う結合交換様式(dissociative exchange)ではなく、「常結合性結合交換(associative exchange)」により架橋交換が起こる樹脂は、現在vitrimerという総称で注目されています。Vitrimerは、結合交換能に因んだ再利用性・傷の修復・再形成などのサスティナブル機能が発現し、熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂の性質を兼ね備えた新素材としての価値があります(https://www.youtube.com/watch?v=Phanix8jPXI)。林研究室では、新規分子設計開拓や精密な物性制御法構築に先駆的に挑戦しており、Vitrimerの実用応用への展開に貢献しています。また、サスティナブル性だけに焦点を当てるのではなく、接着や発泡、コンポジットなど、既存技術にプラスαの機能を提供する研究も行っております。

アップサイクル技術開発

 2015年のSDGsの制定以降、資源循環に関する社会的意識が高まっています。リサイクルは、石油資源消費の抑制に効果的な技術の1つですが、例えば社会インフラが構築されているPETの場合でも、回収後、約80%は燃焼されてしまいます(熱エネルギーとして回収)。つまり、リサイクル用に回収したとしても、資源としてはほとんど循環していません。この理由としては、回収→再製品化の過程に費用がかかること(新品よりコストがかかる場合もある)や、洗浄・再成形の過程で種々の分解がおこり、物性が低下してしまうことが挙げられます。すなわち、既存のリサイクル技術ではビジネスとして成り立たたせることが難しいというのが現状です。林研究室では、独自の結合交換技術を基に、リサイクル過程で物性を向上させ、さらに機能化させるというアップサイクル(アップグレードサイクル)についての研究を展開しており(https://www.youtube.com/watch?v=CdBVQog9CRQ)、実効的な資源循環技術革新へと貢献していきます。

高靭性樹脂・破壊/変形特性制御究

 近年では、「将来的な石油資源の枯渇」や「環境汚染問題」に対応するべく、「割れない・ゴミにならない(=材料寿命の長い)高靭性材料」の開発が切実に求められています。また、次世代車両の開発(車両部材の樹脂化)を想定すると、安全性を保障するための車両部材の剛性・強度・靭性が問題点となると予測され、新規高靭性樹脂の先駆的な開発は不可欠です。林研究室では、ガラス樹脂やエラストマーに関して、超分子結合や特殊グラフトコポリマなど、応力分散成分を巧みに配置可能な分子設計により、これらの高靭性化設計法を研究しています。また、樹脂の盲目的な常識を打破するため、3Dプリンターなどを用いた樹脂内の局所パターニングにより、靭性や破壊・変形をデザインするという研究も展開しています。

名古屋工業大学大学院専攻
生命・応用化学系プログラム
名古屋工業大学 生命・応用化学科

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